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国立がん研究センターで mammo (マンモ)の語源を調べたが・・・
 今日、国立がん研究センターに行った。前にも書いたように、僕のためではない。3年前、乳がんの手術を受けたワイフの定期検診に同行したのであるが、今回は、3月末に受けたマンモと採血検査の結果を聞きに行くためだった。何ともなかった。
 彼女は言った・・・
「大丈夫だとは思っているんだけど、万が一ということだってあるから、 ホッとしたわよ」
 その気持ちは、僕とて同じであるが、代って上げられるものではないから、待っている時間、落ち着かない。センターには入院患者が残して行った本がたくさんある。あちらこちらのフロアーに本箱が備えつけられ、小説のたぐいから専門書まで図書館のようにある。
 今日は、「がん専門図書コーナー」に行って、マンモの語源を調べてみた・・・
『乳癌用語小事典 ―キーワードとその解説―』(泉雄 勝著・篠原出版新社)
『これで安心 乳がん最新知識』(赤尾周一著・東洋書店)
『がんと人間』(杉村隆ほか著・岩波新書)
『いちばん新しい乳がんの本』(福富隆志著・二見書房)
 しかし、「マンモ」については、「乳房のX線撮影」とあるだけで、語源については書かれていない。これについては、(財)日本対がん協会の発行するパンフレット『もっと知りたい乳がん』も同じ。
 
 そこで、家に帰って、研究社の『英語語源辞典』で調べてみた・・・
「mammo- (マンモ)、乳房( mamma (マンマ)の意の連結形」
 つまり後に名詞をともなう場合、mamma (マンマ=乳房)が mammo- (マンモ)に変化する」ということで、mammo- graphy (マンモグラフィ)が省略されていない正式名称。意味は、「乳房の(X線撮影による)画像検査」・・・
 さらに、mamma (マンマ=乳房)を調べてみると・・・
「1693年、《解剖》 乳房。◇MAMMA (マンマ=《小児語》で、ママ、かあちゃん)と同一語源」

 ここでちょっと深く考えてみた。「なぜ、乳がんの専門書も日本対がん協会のパンフレットもマンモの語源を書かなかったのだろうか」・・・
 想像するに、乳がんは男性でも発症するから、「語源的にマンモ=女性の乳房」という固定観念を植え付けたくなかったのではないだろうか。
 しかし、この場合、語源をはっきりさせた上で、乳がんは女性だけの病気ではないことを書くべきなのである。そして、男性も発症する可能性があるが、圧倒的に発症率の高い女性が、早期発見のために、定期検診を受ける、そのことを啓蒙して行くべきだと思う・・・

author:ぷるの飼い主, category:S_Science(科学の語源事典), 17:10
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癌(ガン)とcancer (キャンサー)の語源的関係!
 前々回は「癌(ガン)」、前回は英語の「cancer (キャンサー=癌)」の語源について書いた・・・
 今回は、「癌(ガン)とcancer (キャンサー)の語源的関係」について考えてみたいと思う。当然なことに、「中国語とギリシャ語、それぞれ別の言語に由来するから無関係!」という説もあれば、「言葉の響きからして関係あるのでは!?」 という意見もあるだろう。
 この「和・漢・洋・才! 語源のブログ」は、後者の立場に立った仮説を提唱してみたい・・・
 古代ギリシャ語はローマ人によってラテン語に置き換えられたが、中世のヨーロッパは、ゲルマン的な封建社会の上にローマ・カトリックが君臨し、「自由なギリシャ風の学問」は不毛であった。イギリス人がラテン語のcancer (カンケル)という言葉を取り入れた時、「かに座」という意味は使ったが、「癌の腫瘍」という意味は学ばなかったという事実は、「ギリシャ医術」のようなものを行なってはいけないという宗教的な禁忌(キンキ=忌み嫌われることとして禁止される)だったことを暗示する。
 しかし、このラテン語なりその前のギリシャ医術を取り入れた民族が、実はあったのだ! これに関して、平凡社の「世界大百科事典』から「アラビア医学」を引いてみよう。そこには、こうある!
「イスラムが興り、アラブによる大征服が行なわれた7世紀ころ、カリフ政権下に入った広大な地域で医学の一大中心地になったのはエジプトのアレクサンドリアと、もとササン朝ペルシャ領〜であった。これらはみなヒッポクラテスやアリストテレス、ガレノスその他の流れをひくギリシアの合理的医学の上に立った学派であったが、イスラム帝国の支配階級たるアラブは、これら先進の医学を尊重し、人種、宗教の差別を問わず、ユダヤ教徒、キリスト教徒、ゾロアスター教徒、サービア教徒などの医者を登用し、また若干のインドの医者などをも、その宮廷に招いた」
 こうして、ギリシャの合理的医学であるヒポクラテスの学説は、「アラビア医学」に引き継がれ、やがてヨーロッパに逆流し、東進して「インド医学」と合流したりするのである。
 そして、中国では、960年、「宋(ソウ)」の時代に入る。この王朝は、北に興った「遼(リョウ)」→「金(キン)」などによって圧迫され、最後には「元(ゲン)」によって滅ぼされるため、政治的には華々しい時代とはいえないが、1127年に「南宋(ナンソウ)」が始まると、揚子江流域は開発されて食糧は豊かになり、インドシナ・インドネシア、さらに遠くのインドやアラビア諸国まで貿易路を伸ばし、経済的には大きく発展したのであり、平清盛も「日宋貿易」に力を入れた・・・
 前々回、「癌(ガン)」という字の初出について、こう書いている。
「<癌>という字は、清代の有名な≪康熙字典≫(1716)には出ていないので、和製漢字といわれていた。しかし明らかに中国製で、12世紀に書かれた≪衛済宝書≫には<癌>という字がみられ、また中野操の研究によると、南宋の楊士エイの≪仁斎直指方≫(1264)に<癌>の字と症状についての記載がなされているという」
 すなわち、南宋の医者たちは、南洋貿易航路で運ばれた「アラビアの医学書」を学んでいた可能性があるということなのだ。彼らに伝わって来た「ヒポクラテスのkarkinos (カルキノス)とそれに由来するラテン語のcancer (カンケル)」という言葉。意味は、「かに→かにの形態に似た腫瘍の発達」ということは知っている。
 そこで彼らが考えたのは、頭の「カン」という字を漢字に置き換えることであったが、適切な意味を翻訳しうる字がないし、「悪性の腫瘍」というイメージも与えない。しかし・・・
 南宋の領土とする揚子江以南は、蟹(カイ・かに)を「ゲ」と濁音でよむ。「解脱(カイダツ)」も「解脱(ゲダツ)」となる。そこから、「カン」を「ガン」と濁音でよむことを思いついたのではないだろうか。
 さらに、ギリシャ語のkarkinos (カルキノス=かに)やラテン語のcancer (カンケル=かに)は
それよりも古い印欧語のkar (カル=hard=硬い)に由来することから、「岩」の異字体「」に病垂れからなる文字を考え出したのではないだろうか。この「」という字は、「ガン」と読み、「巌(ガン・いわお)=岩山」という意味で、「厳(ゲン)=きびしい」という意味も持っている。
 以上の推論から、「癌(ガン)とcancer (キャンサー)に語源的関係があるという仮説」が細々と成り立つのではないかと思うのであるが、どうだろうか。
 ただし、この仮説は「アラビア医学にcancer (カンケル)に相当する言葉」があるのか、ないのか、そういう問題も解決していない、実にたよりないものであるということを、最後にことわっておきたい!
author:ぷるの飼い主, category:S_Science(科学の語源事典), 10:40
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「癌(ガン)」に続いて、「cancer (キャンサー)」の語源!
 前回、中野操博士が「癌」という字は国字ではないという事実をつきとめたことを書いた。
 ついで、小川鼎三(おがわていぞう)博士が著わした『医学用語の起り』、「癌」の項のつぎの項の冒頭を見ると・・・
「起源前数世紀のギリシアで、すでに、動物のカニを表すカルキノスという言葉が容易に治癒しがた悪性の腫瘍(ことに腫瘍から二次的に生じた如きもの)の名称になった。ヒポクラテスの著書にこの語やそれから導かれたカルキノーマが載っている」
 そして、続いて、
「どうして甲殻類のカニと癌とが結びついたのか、乳癌や皮膚癌で腫瘍のまわりに放射状に静脈やリンパ管が怒張してみえるのが、カニを連想させたか、また一説では悪性の腫瘍で人の体が齧られ苦しめられるので、いささか悪魔的風貌をもったカニが気の毒にも連れ合いにされたのかといわれる」
 ここらへんのことを、研究社の『英語語源辞典』でもう一度確かめてみると・・・
「ギリシャ語のkarkinos (カルキノス=かに)からラテン語のcancer (カンケル=かに)が生まれ、
英語のcancer (キャンサー)となった。しかし、14世紀後半の英語の初出の意味は、星座の「かに座」 であった。その後、「カニ」という意味が出て、17世紀の初頭、オランダより病理学上の癌・癌腫という意味が伝わった。「癌」の意は、病変したその付近の血管や組織をカニの脚にたとえたもの」
 では、どうして、英語に、ラテン語の「かに」という意味がすぐに伝わらなかったのだろうか?
 想像するに、イギリスにはもともとcrab (クラブ=かに)という言葉があり、必要なかった。そのため、ラテン語からは「かに座」という意味を導入したのではないだろうか・・・
 そして、前回の『和漢三才図会』の著書として知られている寺島良安が享保七年(一七二二)に書いた『済生宝』五巻の中に乳癌とある」という箇所。これをベースにさらに敷衍して想像してみよう。しかし、想像する前に、平凡社の『世界大百科事典』で確認しておくと・・・
「寺島良安は、江戸中期の医者であり、雑学者。生没年不詳。≪和漢三才図会≫105巻は、日本の一大百科事典の初めとして、その文化的価値は不朽である」
 雑学者ということは、「和漢の学」だけでなく、「西洋の知識」を取り入れていたということではないだろうか。≪和漢三才図会≫105巻は、明代の『三才図会』106巻(1607年)を手本としたもので、後者には、「世界の天地人の三才(天文・地理・人間の三領域にわたる知識)」が図絵つきで簡略に説明されているからである。
 つまり、16世紀の末にインドネシアに到達し、世界一周を果たしたオランダ人の知識が当地に渡っていた明代の中国人に伝わり、本国にもたらされて出来上がったのが『三才図会』であった。寺島良安は、それやさらに古い中国の文献を学び、新たに長崎の出島(1635年築造)から流入したオランダ医学をもとにしながら、「癌(ガン)」という言葉を日本人として初めて使ったということなのではないだろうか・・・
 しかし、問題は残る!
 中国の南宋の時代にできた『仁斎直指方』(一二六四)にも、「癌」という字が載っているらしい。ただし、中野操博士も小川鼎三博士もまだその本を見ていない。では、見てはいないが、この本に出ているのは間違いないとして、「癌(ガン)」という字はどういう観点から生まれたのだろうか?
 そのことについては、次回にまわそう!

 (続く)  続きは、「癌(ガン)とcancer (キャンサー)の語源的関係」です!
author:ぷるの飼い主, category:S_Science(科学の語源事典), 10:42
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国立がんセンターに行ったので、癌(ガン)の語源!
 今日、国立がんセンターに行った。僕の身体のためではない。妻が2年前に乳がんの手術を受けていて、その後定期検査を行っている。僕は、診察室から出て来た妻から、「大丈夫ですよ! それでは3ヵ月後って、言われた」という言葉をすぐに聞きたいがためである。
 そこで、今日は、癌(ガン)、英語のcancer (キャンサー)の語源について調べてみた・・・
 ことがことだけに、 言葉の持つ意味が非常に重いがゆえに、いい加減なことは書けない。参考文献も選び抜いた。
 その一冊のタイトルは、『医学用語の起り』(東京書籍)。著者は小川鼎三(おがわていぞう)という人で、東京大学医学部を卒業し、東京大学名誉教授、順天堂大学客員教授、日本医史学会理事長、日本学士院会員という肩書きを持っている。1901年(明治三十四年)生まれ。
 その著書の「癌」には、冒頭、こうある。
「癌という字はふつうの漢字みたいにみえるが、じっさいは国字すなわち日本製の文字らしいのである。差し当たり有名な康熙字典(一七一六)を繰ってもこの字はみあたらない」
 しかし、その意見に対しては、『世界大百科事典』(平凡社)がこう記している。
「<癌>という字は、清代の有名な≪康熙字典≫(1716)には出ていないので、和製漢字といわれていた。しかし明らかに中国製で、12世紀に書かれた≪衛済宝書≫には<癌>という字がみられ、また中野操の研究によると、南宋の楊士エイの≪仁斎直指方≫(1264)に<癌>の字と症状についての記載がなされているという」
 これに関し、インターネットの「語源由来辞典」にはこう書いてある。
「江戸時代の医学書に「乳岩」でみられることから、「岩」の漢字音が語源であると考えられる。「ガンを「岩」としたのは、触ると固いしこりがあるところからと思われる。漢字の「癌」も、「岩」の異字体「

」に病垂れからなる文字である」
 この「」という字は、「ガン」と読み、「巌(ガン・いわお)=岩山」という意味で、「厳(ゲン)=きびしい」という意味も持っている。 年末、TBSが放映した「JIN ー仁ー」には、「岩(ガン)」が使われていたというから、この「語源由来辞典」の影響をうけたが、「」という字が難しいため、「岩(ガン)」という字を使ったようだ・・・
『医学用語の起り』に戻ると、それを証明するように、こんなことが書いてあった・・・
「癌の字を創作した日本人(?)は漢字の素養が深くて、またずいぶんとよく考えたものだとおもう。それが誰であるかについて大阪の中野操博士は、『和漢三才図会』の著書として知られている寺島良安が享保七年(一七二二)に書いた『済生宝』五巻の中に乳癌とあるので、もしかしたら彼の新造字であるまいかという(「大阪医学風土記」第二八ページ)。
 そして、小川鼎三は「癌」という項の最後にこう補足している・・・
「ところが近ごろ大阪の中野操博士はこの問題について発表され、「癌」はやはり中国製の漢字であることを確かめ得たといわれる。南宋の時代にできた『仁斎直指方』(一二六四)にこの漢字が載っているらしいが、中野博士はまだその本を見ていないという。しかし朝鮮の李朝初期の『郷薬集成方』(一四三三)、中国の明代の『仁斎直指附遣方論』(一五五〇)、同じく明代の『医学入門』(一五七五)に癌の字があることを中野博士は確かめたという。この問題についての大進歩である。同時に「癌」は国字かという私どもの夢は消えた」
 小川鼎三(おがわていぞう)が『医学用語の起り』を書いたのは1983年であり、平凡社の『世界大百科事典』が出版されたのは1988年であるから、後者の記述は、前者から取ったことがわかる。

(続く)  続きは、「cancer (キャンサー)の語源」です!

author:ぷるの飼い主, category:S_Science(科学の語源事典), 15:07
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人気TVドラマ「ER」から、ambulance(アンビュランス=救急車)の語源!
TVドラマの「ER(イーアル=緊急救命室)」を見るのが好きで、毎晩、「スパー! ドラマTV41」で古いシリーズから見直している。グリーン先生は死んでいないし、薬漬けになる前のカーターも若々しく、ジョージ・クルーニ演ずるロス先生もイケテいる。真剣に緊急医療と格闘しながら、みんな恋をしているところがとてもいい・・・
そこで今日は、ERの前に患者を搬送して来るambulance(アンビュランス=救急車)の語源について。この言葉、R・K・バーンハートの『アメリカ英語語源辞典』によると、フランス語のhopital ambulant(オピタル アンビュラ〜ン=動き回る病院)に由来し、形容詞のambulant(アンビュラ〜ン=移動する)が名詞化されて使われ出したのだという。
英語のambulance(アンビュランス=移動)が「移動野戦病院」という意味を初出したのは、1809年のこと。時代としては、ナポレオン戦争の頃であったが、まだ、「医者を乗せた馬車」が戦場に倒れている負傷兵のところを巡り、動き回っていた。それが、「負傷兵搬送荷馬車」という意味になったのは、1853〜56年のクリミア戦争の時からであった。
現代のように病人や負傷者を救急病院に運ぶ「救急車」という意味になったのは、20世紀に入ってからであるが、初期の頃は、まだ自動車はなく、馬車であったに違いない。関連英語のamble(アンブル)は、「(馬が片側の両脚を上げて)ゆっくり歩く」という意味だからである・・・

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author:ぷるの飼い主, category:S_Science(科学の語源事典), 10:52
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